裁判例1


<事案>

 X(70歳代女性)は,X宅において,電話で,Xの息子と名乗る者から,会社の金を使い込んで,警察署に勾留されており金を送ってくれないと出られないので,1000万円を箱に入れて送付するように求められました。

 Xはこの電話の内容を信用して,宅急便で現金1000万円を入れた箱をYが運営する「私設私書箱」に送付しました(本件の私設私書箱とは,Yが契約者に代わって郵便物等を受け取るサービスのことです)。

 

<裁判所の判断>

 裁判にてYは,会社の業務である私設私書箱サービスとして,顧客への荷物を受け取って顧客に渡しただけであり,詐欺につき共謀していないと主張しました。

 しかし裁判所は,犯人が繰り返しYの私設私書箱を利用していること,振り込め詐欺に関する警察官からの捜査に関する照会書を繰り返し受け取っていることなどから,Yが犯人と共謀の上,組織的,継続的にいわゆる振り込め詐欺を行ってきたことは優に推認できるとして,Yに対し,全額の1000万円及び遅延損害金の支払いを命じました。

 

<コメント>

 この裁判は,振り込め詐欺に関するものですが,詐欺をする者とだまし取った金銭の受取人が異なることは,出会い系被害を含め,他の消費者事件でもあります。だまし取ったお金の受取人に対する責任を認めた意義のある判決です。